都響が野音のステージに上がるのは、なんと47年ぶり!

日比谷野音(現:日比谷公園大音楽堂)といえば、数々の歌謡曲からポップスのスターが伝説のステージを繰り広げてきた日本を代表する野外ステージです。都心にいながらにして野外フェスのような雰囲気が味わえることから人気が高く、誕生から100年近く経つ現在も日本の音楽シーンと共に歩み続けています。
実は1966年から都響は時おり、野音でコンサートを開いてきました。特に70~72年にかけては「ポップス・コンサート」という名称で、抽選で無料ご招待というかたちによる気軽かつ本格的な演奏会を何度も開催。73年にはお隣の日比谷公会堂でもおこなわれたのですが、残念ながらこのシリーズ自体がなくなってしまいます。だから野音のステージに都響が乗るのは47年ぶりのことなのです!
オーケストラの野外コンサートといえば、世界中に中継されるベルリンフィルの「ヴァルトビューネ」、ウィーンフィルの「シェーンブルン宮殿夏の夜のコンサート」、ロサンゼルスフィルの「ハリウッド・ボウル」等と人気シリーズがいくつも存在しているのですが、残念ながら日本では滅多に開かれておりません。テレビ中継を通して開放感あふれる野外コンサートに憧れてきた方はもちろんのこと、4歳以上のお子様でもご入場いただけるのでコンサートホール公演にデビューする直前の慣らしにも最適ですよ。老若男女が楽しめるプログラムが組まれています。

世代を超えて楽しめる名曲たち

古関 裕而(栗山 和樹 編曲):オリンピック・マーチ

来年の朝ドラで主人公のモデルになることが決まり、今後改めて注目されるのは間違いない古関裕而(こせきゆうじ)。昭和の歌謡曲史の頂点に立つ作曲家のひとりとして知られていますが、もともとはクラシックの作曲家を志し、ゴジラの音楽で知られる伊福部昭などに先駆けて日本人として初めて海外の作曲コンクールに入賞した才能の持ち主でもありました。彼が東京オリンピック(1964年)の開会式のために書き下ろした行進曲です。

ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ・シュネル《雷鳴と稲妻》op. 324

ポップス・オーケストラの先駆けともいえる「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世の精神は現在、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートに引き継がれ、年始の恒例行事として世界中で親しまれています。この曲はタイトルの通り、雷が落ちた「音」を大・小太鼓で、稲妻の「光」をシンバルで表現しているのですが、ひたすら陽気な音楽で暗さは一切ありません(……というのもシュトラウス2世は、荒れた日のお天気を家のなかから眺めるのが大好きだったのです)。

フレデリック・ロウ(コウレッジ 編曲):ミュージカル『マイ・フェア・レディ』序曲
グレン・ミラー/ヘンリー・マンシーニ(和田 薫 編曲):ムーンメドレー "ムーンライト・セレナーデ&ムーン・リバー"

続いては、アメリカのショービジネスを代表する名曲をオーケストラで!オードリー・ヘップバーン主演の映画でも知られるミュージカル『マイ・フェア・レディ』は、劇中曲の「踊り明かそう」があまりに有名ですが、今回演奏する序曲は「踊り明かそう」を含む、劇中の流麗な旋律をメドレー風にまとめたもの。
一方の『ムーンメドレー』は月をテーマにしたジャズの名曲をつなげたもの。「ムーン・リバー」は映画『ティファニーで朝食を』の劇中曲で、こちらの主演もヘップバーン。彼女が歌うことで有名になった楽曲です。更にヘンリー・マンシーニは、もともとグレン・ミラー楽団出身――いわば師弟メドレーといった趣向も凝らされているのです。どちらも古き良き時代のアメリカを感じさせてくれるでしょう。

久石 譲(和田 薫 編曲):映画『風の谷のナウシカ』より「風の伝説」「遠い日々」「遥かな地へ」

映画は映画でも今度は、日本らしいアニメ映画の音楽を。現在ではスタジオジブリの作品として認知されていますが、正確にはジブリ設立の前年に公開となったのが『風の谷のナウシカ』です。宮崎駿の名を一躍高めた作品であると同時に、まだ30代前半だった作曲家久石譲の出世作となった映画でもあります。オリジナルは、当時珍しかった最新型シンセサイザーとオーケストラのサウンドを組み合わせたサウンドが特徴的でしたが、今回はアニメ『犬夜叉』などの音楽を担当してきた和田薫によるオーケストラ版で演奏いたします。

ルロイ・アンダーソン:「舞踏会の美女」「忘れられし夢」

ポップス・オーケストラに特化した作品を書かせたら、ルロイ・アンダーソンの右に出る者はいません。親しみやすい旋律を、心躍るリズムで盛り上げ、時にはクスッと笑える仕掛けまで……わずか数分の間にポップス・オーケストラを聴く楽しみを存分に詰め込むことができる作曲家です。ワルツを踊る舞踏会で美女に一目惚れしてしまう「舞踏会の美女」、かつて愛した人を思い出して胸が締め付けられる「忘れられし夢」という、恋に関する2曲を続けてお聴きいただきましょう。

ジョン・ウィリアムズ:交響組曲『スター・ウォーズ』より「メイン・タイトル」「帝国のマーチ」「王座の間とエンド・タイトル」

ラストは今年12月に公開されるエピソード9「スカイウォーカーの夜明け」で、いよいよ42年越しでのシリーズ完結となる『スター・ウォーズ』の音楽です(エピソード4「新たなる希望」、エピソード5「帝国の逆襲」からのセレクション)。作曲者のジョン・ウィリアムズは、今年で87歳という高齢ながら新作でも音楽を担当するなど、半世紀以上にわたりハリウッドの映画音楽を先導してきた巨匠。スター・ウォーズの音楽は、いまやベルリンフィルやウィーンフィルでさえ演奏するクラシックになってきました。また彼はボストン・ポップス・オーケストラの指揮者としても長らく活動するなど、ポップス・オーケストラの歴史にも大きな足跡を遺しています。

これだけバラエティに富んだ曲目を、なんと入場無料(※事前申込制、全席指定)でお楽しみいただけます。野音は今年の頭に改修工事がおこなわれ、木のぬくもりが感じられるベンチになり、トイレなどの環境も改善したといいますから、より一層どなたにでも快適に過ごしやすい環境が整えられたのも嬉しいところ。お友達やご家族にお声がけいただくのもオススメですので、皆さまでご予定を調整のうえ、9月20日(金)23:59の申込締切をどうぞお忘れなく!

文/小室敬幸(音楽ライター)