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「歌う!聴く!踊る!」をキーワードに、誰もが楽しめる音楽祭として2018年にはじまったサラダ音楽祭が今年も戻ってくる。今回の目玉は9月16日(月・祝)に開かれる、オペラ歌手・合唱団・バレエ団によって描かれる《ロメオとジュリエット》の物語だ。

音楽を手がけたのは、今年が没後150年というアニバーサリーイヤーのため、改めて注目を集めているフランス人のエクトル・ベルリオーズ(1803~1869)。ベートーヴェンの後継者にあたる作曲家のひとりで、ベートーヴェンが「第九」で交響曲に歌を導入して新しい世界を切り開いていったのにならい、交響曲の新たな可能性を追求していたのだ。その結果生まれたのが劇的交響曲(≒「演劇的な交響曲」とも訳せる)《ロメオとジュリエット》である。全7部、90分ほどの作品なので、短めの映画を観に行くぐらいの気分でお聴きいただけるだろう。

この作品の面白さは、言葉の使用を敢えて限っているところにある。オペラ歌手と合唱団が登場するのは最初[第1部]と最後[第7部]、そして[第3部]の頭に少し合唱が登場するのみ――つまり物語の半分以上を音楽だけで描いていくのだ(だから、この作品はオペラでもオラトリオでもなく、「交響曲を拡張したもの」という位置づけになる)。更に今回は指揮者大野和士の意向により、日本屈指のカンパニーである安達悦子率いる東京シティ・バレエ団が加わって、要所要所で物語を視覚的にも描いていく。見どころ満載で、あっという間の90分間になること間違いない。

OK!オーケストラ

この企画の立役者は、東京都交響楽団の音楽監督でもある大野和士。今回の選曲について、2020年のオリンピック・パラリンピックイヤーに向かう日本から「憎み合っていた世界の人たちが、ロメオとジュリエットの2人の純愛の力で、最後は親和し、結ばれていく過程」を描いたこの曲を世界へと発信する意義があるのだと大野は説く。第7部で神父役の歌手が「友であることを永遠に私たちは誓う!」と歌うのは、まさに「第九」と一緒なんだと語る大野が、この曲を通じて何を伝えようとしているかは明白だろう。

OK!オーケストラ

他の出演者たちも非常に豪華である。独唱者として出演する3名は、国内外のオペラ公演で主役級の役柄を演じている歌手ばかり。世界的な指揮者や演出家からの評価も高いメゾソプラノ歌手の谷口睦美に、美声と演技力を兼ね備え、幅広いレパートリーを誇るテノール歌手の村上公太。そして、日本を代表するバス歌手としての地位をいまや盤石のものとしている妻屋秀和――特に妻屋は、前述した神父役を歌う本作のキーマンとなるだけに、より重要な役どころといえる。また大野が芸術監督を務める新国立劇場所属の新国立劇場合唱団も出演。普段からオペラの舞台上で演技もこなしている彼らほど、今回の上演に相応しい日本の合唱団は他にない。日本最高峰の合唱を十二分に堪能できるはずだ。

「誰もが楽しめる」と謳ったコンサートは沢山あるが、サラダ音楽祭の素晴らしさは、分かりやすいだけでなく、本格的な作品を一流の演奏家ばかりでお届けするところにある。クラシックファンも認める大野和士指揮 東京都交響楽団という、いま波に乗っているコンビによる注目公演をどうかお見逃しなく。

文/小室敬幸(音楽ライター)